「HIV感染者就労のための協働シンポジウム 名古屋報告会」レポート

2009.3.10

「HIV感染者就労のための協働シンポジウム 名古屋報告会」レポート

●名古屋報告会

日時:3月2日(月)15:00-17:00
会場:テルミナ会議室 7階会議室
        名古屋市中村区名駅1-1-2

医療「制度を使って、医療チームによる就労継続するための取り組みが重要」「患者さん(HIV感染者)の思いを知れば、この人の生き方にかかわれる」
行政「企業側にHIVの知識をどのように伝えるかが重要」

●レポート

昨年よりも多くの免疫機能障害者が相談に訪れたハローワーク名古屋中の下村亮主任就職促進指導官世界的な不況の影響を受け、愛知ブロックでは、派遣労働者含め失職者が前年比約2倍となるなど、非常に厳しい状況とのことでした。HIV感染者についても、今年度は雇用保険手続きを契機にハローワークへの相談に来るケースが多いとのことでした。

名古屋報告会では、このような厳しい現状をふまえ、「制度を活用して就労継続する取り組み」と「HIV/AIDSの理解を進める取り組み」を進めるという今後の課題が明確になったことに加えて、「行政の新人担当者」「企業担当者」「当事者」を中心に、それぞれの対象について早急に大規模な勉強会・セミナーの企画を進めるなど、具体的な計画についても話し合われました。
(写真右:昨年よりも多くの免疫機能障害者が相談に訪れたハローワーク名古屋中の下村亮主任就職促進指導官)

その後のフロアを含めた質疑応答が行われ、官公署・上場企業対象とした1000社アンケートでの回収率の低さと関連して、HIV/AIDSに関する企業・社会の関心が低いというコメントなどが寄せられました。参加した人数は20人ほどでしたが密度が濃い討論が行われました。

世界的に有名になった「カイゼン」を標榜するトヨタのお膝元ということもあるのでしょうか、ハード面、ソフト面での具体的な「カイゼン」と、そのための「行政」「医療」「企業」を含んだ強力なチーム支援について、今後の具体的な取り組みにつながる報告会となりました。特に、自らの意思でオープンでの就労を希望するHIV感染者に対しては、ハローワークは一概にクローズでの就労を勧めるのではなく、正確な情報を元に、ハローワーク・医療機関が連携して企業を説得する支援も必要だと思われました。

●プログラム

東京で行われたシンポジウムを報告する関由起子委員長【HIV感染者就労のための協働シンポジウム 報告】
関 由起子(HIV感染者就労のための協働シンポジウム委員会 委員長)
              (埼玉大学教育学部学校保健学講座 准教授)

【患者さんから学んだこと】
菊池 恵美子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター リサーチレジデント(カウンセラー))

【障害者の雇用制度とその活用】
下村 亮(名古屋中公共職業安定所 専門援助第三部門 主任就職促進指導官)

【フロア全体】
質疑応答

(写真右上:東京で行われたシンポジウムを報告する関由起子委員長)

 

■シンポジウムに参加者の声(アンケート自由回答欄より)

名古屋医療センターのカウンセラー菊池恵美子氏は「患者さんから学んだこと」というテーマで講演名古屋医療センターのカウンセラー菊池恵美子氏は「患者さんから学んだこと」というテーマで講演
これまで資料(チラシ)を拝見させていただく機会はあったが、実際に生の声として説明を受けることによって、

より理解が深める機会となりました。(女性・30代・医療福祉関係者)

「エイズである」ことを会社や同僚に開示することが、感染者にとって、こんなにも負担になることとは今までは思っていなかったため、大変勉強になった。(男性・20代・行政担当者)

(写真左:名古屋医療センターのカウンセラー菊池恵美子氏は「患者さんから学んだこと」というテーマで講演)

現在、HIV対策は検査・啓発が主になっているが、感染者の増加に伴い、就労の問題、地域での感染者の支援などのあり方が大きな課題になってくると思います。(男性・50代・行政担当者)

HIV感染に関する知識だけでなくイメージが大きく影響してともに働けないと思ってしまうきぎょうなどが多いと思います。感染者本人が告知するリスクはなるべく少なくしながら企業の中で勉強会などができるといいと思います。企業以外でも行政での雇用はどうなのでしょうね。(女性・30代・当事者団体関係者)

障害者雇用枠で、賃金が低く抑えられている実状もあります。そのこと自体を改善することも発信していかないと、働く人自身の所得保障、労働に見合った対価として納得しにくいと思っています。(女性・30代・研究者)

<一言メッセージ・免疫機能障害者雇用促進にむけて>

より個人が個人らしく社会の中で当り前の生活を送れるような大切なサポートの一つだと思います。継続的な推進を期待しています。(女性・30代・医療福祉関係者)

一般成人(就労者)に対して、予防啓発だけでなく、正しい知識普及も今後必要であることが改めて分かった。(男性・20代・行政担当者)

HIV陽性者が就労を求めていることについて存在を知っていただくための広報を積極的にお願いします。(男性・40代・当事者団体関係者)

企業側にとってもメリットが高いことをもっと前面に出すことも一つかと思います。(女性・30代・研究者)

 

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