企業の従業員を対象にしたHIVと就労に関するインターネット調査の結果がまとまりました。
2012.2.17
はばたき福祉事業団では、職域でのHIV/AIDSに関する意識と態度についての実態を把握するため、企業の従業員を対象にしたインターネット調査「HIVと就労に関する意識調査(調査実施主体:社会福祉法人はばたき福祉事業団、2011)」を行い、その調査結果をまとめました。
(有効回答数254件(回収率63.3%))
調査結果によると、同僚・上司のHIV感染を知った時「今まで通りに接する(94.4%)」「仕事を続けるよう勧める(73.1%)」、「HIV感染者と一緒に働くことは問題がない(76.5%)」など、実際での職場でのHIV感染者に対する理解や、支援意識が示されました。
一方、自分自身がHIV感染者となった場合には、「どうしていいか分からない(60.3%)」「会社に伏せたまま仕事を続ける(52.4%)」など、支援を受ける難しさが浮き彫りになりました。また、「仕事を辞める(5.5%)」という回答もありました。
また、「世の中には、HIV感染者に対する差別・偏見がある(90.1%)」などでした。
職場における支援の問題として、先行研究では、「HIV感染者は、職場でストレスにさらされやすく、上司・同僚など社内での支援を得にくい」ことが知られていました。
例えば、HIV感染者を対象にした全国調査(2009)※によると、半数以上が「HIVと関連して職場ストレスを感じる(53.5%)」と回答しています。
今回の企業調査では、二つのことが明らかになりました。
・同僚・上司のHIV感染を知った時、「今まで通りに接する」「仕事を続けるよう勧める」、「HIV感染者と一緒に働くことは問題がない」などサポーティブな態度を取るつもりであること
・自分自身がHIV感染者となった場合には、「どうしていいか分からない」「会社に伏せたまま仕事を続ける」などの態度や考えを持つこと
です。
実際に同僚・上司の立場で、HIV感染者に対しどのような態度・考えを持つことは今までほとんど知られていませんでした。この調査を通じて、9割を超す大多数の回答者は「世の中には、HIV感染者に対する差別・偏見がある」とする中、多くが支援的な態度をとることが明らかになりました。
一方で、自分自身が、HIV感染者となった場合、支援を得ることの難しさや、「どうしていいか分からない」などの不安が明らかになりました。職場での支援の問題が明らかになるなど、HIV感染者を対象とした先行研究とも共通した特徴を持つ結果となりました。
背景要因として、HIV/AIDSに関する社会的な差別・偏見という問題点が見えてきました。また、HIV感染が分かった場合の離職リスクは5%と高率であることから、今後取り組みが必要なことが示唆されました。
( 社会福祉法人はばたき福祉事業団 専門家相談員/研究員 久地井寿哉 )
調査協力のお願い
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東京都新宿区新小川町9番20号
新小川町ビル5階
社会福祉法人 はばたき福祉事業団:HIVと就労に関する意識調査 係
Info(アットマーク)habataki.gr.jp
※平成20年度 HIV感染患者の就労に関する質問紙調査・インタビュー調査報告書(第2報), 厚生労働省平成20年度障害者保健福祉推進事業(障害者自立支援プロジェクト),はばたき福祉事業団, 2009
<図1>
主なポイントは以下の通りです。
1)自分自身のHIV感染を知った時
「どうしていいかわからない」との回答が60.3%。「会社に伏せたまま仕事を続ける」との回答が52.4%でした。
その他の質問では、
「治療と同時に仕事を続けていきたい」90.9%、「仕事を辞める」との回答5.5%でした。
<図2>
2)HIV感染者といっしょに働くことについて
「HIV感染者といっしょに働くことは問題がないとの回答」が76.5%
その他の質問では
「あなたは万が一のことを考えて、職場でHIV感染者とはあまり接触したくない」17.3%
「世の中には、HIV感染者に対する差別偏見がある」90.1%
<図3>
3)同僚・上司のHIV感染を知った時
「今まで通りに接する」との回答が94.4%。「仕事を続けるよう勧める」との回答が73.1%でした。
その他の質問では「今までとは付き合い方が変わる」8.0%となりました。
<図4>
調査概要
調査名:HIVと就労に関する意識調査
調査実施主体:
調査対象:企業4社(上場企業他/製薬・金融・サービス他)
調査時期:2011年8月~11月
調査方法:インターネット調査(匿名)
有効回答率:254件/401件(63.3%)
調査目的:
1)HIVに関する意識や態度
2)実際の職場での対応
3)自身や上司・同僚のHIV感染が判明した時の態度や考え
以上、全43項目について質問した。