【報告会レポート】2月18日に広島報告会を開催しました

2008.2.29

昨年10月14日に行った、「HIV感染者の就労のための協働シンポジウム」の報告会、2月18日(月)に広島市で開催した。名古屋、仙台と続き、広島は3回目。この日の広島は快晴だが、0℃と厚手のコートを羽織っていても空気や風が冷たい一日だった。

●協働シンポジウム委員会委員長からの概要報告:関由起子先生(埼玉大学 准教授)

協働シンポジウム委員会・関由起子委員長報告会では、まず始めに「HIV感染者のための協働シンポジウム」を計画・実施したシンポジウム委員会の関由起子委員長から、昨年10月14日のシンポジウムの概要報告があった。

医療の現状について、エイズ治療・研究開発センター(ACC)・岡慎一センター長のビデオ説明を放映し、「病気を理由に仕事を辞める必要はない」、「受診継続は一般就労しながらでも可能」と当事者、就労を紹介する立場の人や雇用する側に「HIV感染者の雇用にためらいがあるのは時代遅れの話」との指摘を紹介。

健康保険使用に対する不安については、厚生労働省の保険局保険課の柴田拓己課長補佐の講演から、保険給付に必要な個人情報は「個人情報の保護に関する法律」によって今まで以上に適切に取り扱うことが義務付けられ、健康保険組合に関してはさらにガイドラインが通達されていること。国民健康保険(市町村)・共済組合(国・自治体・学校・警察等)・政府管掌健康保険(都道府県の社会保険事務所)は、公務員職務規定による守秘義務があり、レセプトの取り扱いについても限られた範囲内の人が行い、厳重な管理下にあること。そのため個人の特定など漏えいについては厳しく対処していることを紹介。委員長はその点から、まず心配はないが...と言及しながらも更に信頼を寄せられるようにとの含みを残した。
(写真:協働シンポジウム委員会・関由起子委員長)

社会福祉法人はばたき福祉事業団・大平勝美理事長障害者雇用制度についとその活用については、東京・ハローワーク飯田橋の長谷川敦子統括職業指導官が講演した東京のケースを少し紹介し、平成18年の障害者雇用・4402人中免疫不全の手帳を使用した人が28人。これを多いとみるか少ないとみるか、また名古屋では0人、仙台では2人の職業申込があったことを紹介した。障害者雇用についても求人数は右肩上がりで、9割が301人以上の大企業であること。企業側のスタンスについては、横河電機株式会社の人財部箕輪優子氏の講演から、障害者枠で就職した場合、企業は「どういう仕事をしたいのか」、「今までの経験」など、仕事への意欲を求めること。また、障害の種類が問題ではなく、会社がその人に特別配慮しなければならないことが重要(例えば週3回の透析、車いすへの配慮等々)。会社での情報管理は他に企業秘密など企業がきちんと守らなければ会社として成り立たない現状から、横河電機では徹底教育をしていることを紹介。関委員長はシンポジウム参加当事者の発言にあった「大企業は情報漏洩について心配ないが、企業規模の小さいところには不安が残る」との話も併せて紹介した。
ACCのコーディネーターナース、大金美和氏による「HIV感染の療養目的は治療の成功と療養生活の安定。生活基盤を確保するためには、就労は欠かせない」の発言を紹介し、また患者と直面する医療者、当事者自身が障害者雇用制度を知らない人が多いのが現状という言及したことに触れた。

最後に、シンポジウムで注目された当事者3人のビデオメッセージの短縮版を放映した。「できる仕事を始めてみることが大切」、「障害者手帳(免疫機能障害)をフルに活用し、職業相談・職業訓練所・就労、そして福祉サービスの充実化を得る」、「障害者手帳(免疫機能障害)を使い就職。配慮を感じながらも普通に職業生活」と3人それぞれの就業への話があった。
(写真:社会福祉法人はばたき福祉事業団・大平勝美理事長)

●ハローワークからの情報提供「地域のハローワークの利用の仕方」:森田英和先生(福山公共職業安定所 専門相談部門 統括職業指導官)

福山公共職業安定所・森田英和先生森田英和統括職業指導官からは、特にハローワーク利用にあたってのポイントの説明があった。最初に、会場に来ていた人に「ハローワークを利用したことがある人」と聞くと、2人の挙手があった。ハローワークの名前や機能などの簡単な説明があった。全国に590か所ほどの公共職業安定所(ハローワーク)があり、広島県内では17か所。ハローワークという呼び名も20年を経て定着してきた。

機能として、国の機関として無料で職業を紹介することや、雇用保険の失業給付などの業務をしている。職業紹介には、まず職業相談を行っていて、職種や適切な仕事の選択、また何をやっていたかの経歴書の書き方や、何をしていけばいいのかという相談や職業診断などを前提として行っている。それから職業紹介をし、就職へつなげる。この就職するということが重要な目的だが、就職して、会社に定着し、充実した職業生活を送ることができることが最終目的と考えている。また、障害者というと会社なども先入観として、障害者イコール車いすなど、誤ったイメージ、間違った認識があるのが現実で、その理解を進めていくことも大切。

福山地域で1人、免疫機能障害での求人申し込みがあったことを言及。理解のない事業所なども残念ながら多いが、採用を進めている事業所も増えていて、雇用数は伸びている。ハローワークは職業相談、職業紹介、就職定着のアフターフォローをしていることをぜひお知らせしたい、と締めくくった。
(写真:福山公共職業安定所・森田英和先生)

●医療者からの情報提「HIV感染症:病気を抱えて生きていくこと」:高田昇先生(広島大学病院 輸血部・エイズ医療対策室)

広島大学病院・高田昇先生HIV感染症・エイズの基本的な説明を平易にされた。HIV感染者・エイズ患者の増加や、自身が診ている患者の推移・通院患者の年齢分布(75人中31人が30 代。40%を占める)、また患者の就職状況を発表した。HIV患者52人中就業している人は42人、就業していない人(主婦・学生を除く)は5人と何らかの形で就業している。またエイズ発症者の23人中就業している人は16人、就業していない人は6人(主婦・学生を除く)。高田先生の診ている患者では就業していない人は少ないという。就業している人が、ハローワークの森田氏が言う「充実して職業生活を送っているか」という点は不明と感じた。HIV感染症の患者が抱える側面として、医学的問題・心理的問題・社会的問題の3つのことを指摘し、個々の専門職が包括的な視点を持った役割を担い、そして専門職が他の職種の援助法を取り組む多重的な支援を説明。早く、チームが総合された具体的支援体制ができることを熱望したい。
(写真:広島大学病院・高田昇先生)

●質疑応答

右から関委員長、高田先生、森田先生質疑応答では、病院で就業などの社会的支援を担当する人から、ハローワークのHIV担当者を決めてもらい、その人に連絡すれば不安なくスムーズに就業相談ができる体制を考えて欲しいとの要望があった。

参加者が18人と少なかったことから、貴重な情報提供をもっと多くの人に聞いてほしかったと広報が行きとどかなかったことが毎回の反省になった。最後に、地元の支援組織、「りょうちゃんず」の応援に感謝申し上げます。
(写真:右から関委員長、高田先生、森田先生)

▼広島報告会のPDFはこちらからダウンロードできます。

 


●札幌報告会開催日程等

どの報告会も、厚生労働省からの呼び掛けもあり地元ハローワークの専門官など就労をあっせんしてくれる立場から障害者雇用やHIV感染者の免疫機能障害者雇用の際の問題点などの講演があります。また、該当地域を管轄するHIVブロック拠点病院の専門医が、医療の進歩と生活を視野に入れた診療支援について医療者の立場からわかりやすい具体的なお話があります。
報告会開催地の、それぞれ地域の特性を織り交ぜて講演をしていただく予定です。当事者、行政、企業、医療機関などの協働という認識をもっていただき、積極的な対応に大変ありがたく感謝しています。それぞれの立場の専門家がわかりやすく講演していただけますので、一般の方々も、関心のある方は、ぜひ会場に足を運んでください。なお、参加希望の方は下記までご一報くださいますと幸いです。

●連絡先:社会福祉法人はばたき福祉事業団 担当:岩野・柿沼
Tel:03-5228-1200、 E-mail:info@habataki.gr.jp

▼日時
 3月11日(火)15:00-17:00
▼演者
ハローワークからの情報提供:吉田宣博(札幌公共職業安定所 専門援助第一部門 統括職業指導官)
医療者からの情報提供:佐藤典宏(北海道大学病院 高度先進医療支援センター 副センター長)
▼会場
札幌アスペンホテル アスペンB >> 地図
▼住所
札幌市北区北8条西4丁目5番地

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