【報告会レポート】3月11日に札幌報告会を開催しました

2008.3.24

「HIV感染者就労のための協働シンポジウム報告会」最後の札幌報告で終わる

雪交じりの氷雨が降る札幌、春の訪れが足踏みしていた。それを象徴するかのように、最後の報告会の参加人数は20人弱と少なかった。

しかし、ハローワークからの丁寧な報告や、北大病院でHIV/エイズ医療を直接調整している医療者の報告、そしてフロアからの意見などがあり。地域性の出た報告会となった。

●あいさつ

大平勝美(社会福祉法人はばたき福祉事業団 理事長)▼大平勝美(社会福祉法人はばたき福祉事業団 理事長)
協働シンポジウム開催に至る思いを、社会福祉法人はばたき福祉事業団理事長として、はじまりのあいさつの中で触れる。10年前、5年前と確実にHIV感染症治療は進んだ。死の病から生きられる希望が出てきて、今や20年、30年とずっと将来をしっかり歩める慢性感染症となってきた。

では、HIV/AIDSに対する社会での感覚はどうなのか。当初は診療拒否、就労拒否、辞職への陰湿な圧力。当然治療の専念が生きるための闘いであったので、就労は本人、医療者、社会も先送りしてきた問題だったが、その間研究や対策が若干ではあったが存在した。

しかし、20年、そしてこの10年、本人がHIV/AIDSの差別的な対応や自己の抱く差別不安は現実的には目立った前進はない。研究はされるものの、当事者の社会参加が進展する問題解決型ではないため、多くの関係者の協働で問題解決型として就労・生活環境を積極的に整える方向性を打ち出すことを目的とした。医療者や支援者に守られている環境ではなく、当事者が自ら社会と協働をしていく積極的自立を目指していきたいとの趣旨を話した。
(写真:社会福祉法人はばたき福祉事業団・大平勝美理事長)

●「HIV感染者就労のための協働シンポジウム」報告

関由起子先生(HIV感染者就労のための協働シンポジウム委員会)▼関由起子先生(HIV感染者就労のための協働シンポジウム委員会)
協働シンポジウム委員会の関由起子委員長(埼玉大学准教授)は、分かりやすいスライドと解説で、東京で行われた昨年10月14日の協働シンポジウム報告を行った。委員長は、企業において今やHIV感染者が一緒に働いている現実を認識して、より働きやすい環境整備と理解の対応をする時代になったことを強調。
(写真:協働シンポジウム委員会・関由起子委員長)

●障害者の雇用制度とその活用について

吉田宣博先生(札幌公共職業安定所 専門援助第一部門 統括職業指導官)▼吉田宣博先生(札幌公共職業安定所 専門援助第一部門 統括職業指導官)
ハローワークからは吉田宣博先生(札幌公共職業安定所 専門援助第一部門統括職業指導官)お招きし、講演をいただいた。現地のハローワークでは、免疫機能障害の手帳を活用したハローワークへの就労相談はこれまでない、と。身体障害者手帳を使った就職相談・実績の統計から、北海道では免疫機能障害の位置づけは明確でなかった。本来、内部疾患として、そして薬害エイズ訴訟の和解事項として、特段HIV感染症患者を位置付け、その扱いも特段のものであったことがすっかり一般障害者扱いの範囲に入っている様子だった。そのため、これまで3か所の報告会で積極的対応を行っているものに対して、北海道は「免疫機能障害」の手帳の扱いにやや消極的と思われた。今後、自立を積極的に促すために北海道のハローワークから積極的な発信をしてほしい。
(写真:札幌公共職業安定所専門援助第一部門・吉田宣博統括職業指導官)

●HIV感染者就労支援のための医学・医療上の基礎知識

佐藤典宏先生(北海道大学病院 高度先進医療支援センター 副センター長)▼佐藤典宏先生(北海道大学病院 高度先進医療支援センター 副センター長)
北海道のHIV/AIDS医療を担っている北海道大学病院から佐藤典宏医師(北海道大学病院 高度先進医療支援センター副センター長)から、HIV感染症やHIV医療の現状について一般の人でも極めて分かりやすい解説があった。北海道大学病院は道内の多くの患者を診ている。

当日は、北海道大学病院のHIV相談室のカウンセラーも参加した。北大病院の相談室では、生活保護の対象になっているHIV感染者4人のケースを例に、自立を促す努力に骨を折っている様子を話した。カウンセラーの要望で、ハローワークの誰がHIV感染者の相談にのってくれるのかがわかっていると、当事者や相談室としても相談しやすいことが指摘された。前回の広島でも、広島大学病院のHIV相談室のソーシャルワーカーから同様の指摘があった。これは、ソーシャルワーカーやカウンセラー、当事者がハローワークでの相談対応の中で、HIV/AIDS患者(免疫機能障害が内部疾患の身体障害者としての認識も含め)の就労について、問題があったことがわかる。佐藤医師やカウンセラーの方には、時間がなくて急ぎ足の説明になってしまい、大変申し訳なかった。

話はそれるが、佐藤医師は昨年末札幌にオープンした、HIV検査・相談室「サークルさっぽろ」(札幌市の委託によりはばたき福祉事業団が運営)を、医療面でのサポートを北海道大学病院小池隆夫教授とともに精力的に協力してくれている医師。
(写真:北海道大学病院 高度先進医療支援センター・佐藤典宏副センター長)

●質疑応答

左から関委員長、佐藤先生、吉田先生フロアからの発言の中にも、どういう環境が整えられなければならないか検討を云々との客体的(やってもらう)姿勢が見れた。厳しいが、これまでこちらから働きかけをしない限り変わらないことから、自らが変えていく姿勢を強調することがこのシンポジウムの発想点で、まだまだやってもらうという依存志向があることが示唆された。

名古屋からはじまり、仙台、広島、そして札幌と報告会を終了することができた。4回連続出席していただき、シンポジウム委員長として報告をしてくださった関委員長、またそれぞれの会場で仕事を割いて地元の報告をしてくださったハローワークの方やブロック拠点病院の医師、そして参加してくださった方々に厚くお礼申し上げます。今後も続けていきますので、協働という姿勢で参加をお願いします。

あきらめたくない。できるまで。HIV/AIDSの偏見が消えるまで、つづけていく。社会福祉法人はばたき福祉事業団が行っていく使命感。わたくし個人も1983年からの日本での薬害エイズ事件発生から、当事者としてあきらめずにやり続けていくことを使命として、努力している。それは、半端な姿勢では行っていない。
(写真:左から関委員長、佐藤先生、吉田先生)

社会福祉法人はばたき福祉事業団 理事長 大平勝美

▼札幌報告会のPDFはこちらからダウンロードできます

 

 

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